「愛」(2)

さて、この話しをさせて頂く前に
「でき過ぎた話し」「創作した逸話」として受け入れない人もいる。
ただ、これは公立の中学の「道徳」の指導書にも載っていた。
そして昔から、多くの人に語り告げられている。
読む方の心次第である。


500年以上前のこと
デューラーとハンスという若者がいました。


2人は版画を彫る見習いとして修行していましたが、
毎日忙しく、貧しく絵具を買う余裕も、食べることさえ事を欠き
2人は有名な画家の弟子となったものの途方に暮れていました。


ある時ハンスがデューラーに1つの提案をしました。
「このままではどちらもダメになってしまう。
そうだ、1人が働いてもう1人のためにお金を稼いで助けよう。
そして有名になって稼げるようになったら交代だ。」
どちらが先に勉強するのか、2人は譲り合い、
ハンスが切り出しました。
デューラー、君が先に勉強してほしい。
君の方が僕より才能があるから、きっと早く勉強が済むだろう。」


ハンスはお金がたくさん稼げる鉄工所に勤めることになり、
働いたお金をデューラーの元に送り、
デューラーは絵の勉強に没頭しました。


半年、1年、2年…年月は過ぎていきました。


数年後ようやくデューラー
ベネチアでも高い評判を受ける画家になりました。
急いでデューラーはニュールンベルクに戻ってきました。


歓迎する群衆をかき分け、
ひとりのみすぼらしい男に近寄り、
デューラーは、その男を思い切り抱きしめました。
「よし今度はハンスの番だ。」と
ハンスの手を見た時
デューラーは声を上げて泣き出したのです。


なんとハンスの両手は長い間の力仕事でごつごつになり、
絵筆を持って繊細な絵を書くことができなくなっていたのです。


デューラーが心を込めて「ハンスの手」を描いた。
これが「祈りの手」なのです。