感謝します(2)

その教室は初めに、
そちらに来られている園児のグループを指導し、
その後、外部から
小学生以上の子供たちの個人レッスンを行っていた。


冬になると、日も短くなり、生徒が休みになると
広いホールがなお広く感じ、途端に寒さも手伝ってシンシンとした。


そんなある日、トイレに行きたくなった。
真っ暗な廊下を見て
「明るいうちに電気のスイッチを確認すればよかった」
そんな言っても始まらないことをつぶやきながら
かすかな明かりを頼りにトイレに向かった。


大人用のトイレは戸を閉じてしまうと
全く見えなくなってしまい、
誰もいないことを確認して
園児用の戸が半分しかない方を選んだ。
そして、「あっ…」
「昔ながらの」そのトイレに、吸い込まれるように
トイレットペーパーが芯ごと
「ポッチャン」。。。


「どうしよう」


2つの声が聞こえた。
「言わなきゃわからない」「正直に謝るべきだ」


そうだ!!
トイレで感謝していた彼女を思い出し、
私も暗いトイレの中で手を合わせ
「感謝します!!」
その声が異様に響いた。


すると、天使の声が勝ち、
そのまま、隣設している
園長先生のご自宅へ謝りに行った。


おそるおそるチャイムを鳴らし、
「こんな夜分、忙しい時間にすいません。
大変な失敗をしてしまいました。」
「何をしたんですか?」
なかなか言えない私にクイズ問答のような会話。


とうとう、そのままの事実を話すと
「それだけ?」
「はい」
その後、木でできた芯はどこを探しても見当たらず
「香り」が入っているプラスティックの芯を弁償しました。


何日か後、満面の笑みに包まれた園長先生に呼ばれました。
「私には3人の子供がいます。
誠実な先生にお願いしたいと思っていました。」
そして、他の曜日はベテランの素晴らしい先生も
派遣されていたのに、私のような新米先生に
大事なお子様を3人も預けてくださったのです。


「感謝」しなければサタンの声が勝っていたかもしれません。
そして、赤いハイソックスの私は
「学生色の抜けない」鼻つまみのままだったかもしれません。


昨年のキララホールに園長先生をはじめ
保母さん全員の方がお越し下さりました。
懐かしく、その時のお子さんが保母さんになって
ご活躍されていて、感無量でした。


その当時を振り返って
嫌なことや失敗はすぐに感謝する習慣がついていて
反対に物を頂いたり
当然「感謝」すべきところで
「感謝」することを忘れていたりしました。


「感謝」が足りない昨今、
トイレに入りトイレットペーパーを見ると
純粋だったその頃を思い出します…たま〜に。


ちなみに「感謝」することは「祝福の先取り」
つまり、
「こんな状況でも、必ず神様が益にしてくださるから
ありがとうございます」というわけで。
必ず、後で、その時はわからなくても
「感謝」できる方向へ導いてくださる…これが極意です。


よし!!
また「感謝」しよう!


そうそう、そう決めると必ず
「感謝」できない状況が訪れます…。