老い

先日、Yさんご老夫婦が私の家に来られた。
私が伴奏をして、Yさんが思う存分「讃美歌」を歌うと
思い極まって涙を流された。
それを見た奥様が
「とても心配ですが、病気にいいかもしれないので」と
LIVEに足をはこんでくださった。
実は
讃美歌が大好きなYさんは
老人性痴呆症」で急激にその病が進行していた。


LINEで
「『いつくしみ深く』をご一緒に…」
その曲を大きな声で歌ってくださったYさん。
でも、
普段歌わない違うジャンルの曲も私が歌い、
讃美歌でも英語もありで一緒に歌えず、
がっかりされたかもしれない。
そして、さすがに3時間近いLIVEに疲れておられたでしょう。
とうとうYさんの思いが…。


私が「ダイアナ」をギター伴奏で歌っている時だった。
会衆の方が共に日本語で歌ってくださり、
急きょ途中から「日本語」で歌った。
しかし、歌ってしまった後、
「しまった!!」
過激な詩…「地獄のはてまでついて行く」であることに気付いた。


すると、Yさんの気持ちを逆なでし、動揺させてしまった。
よりにもよって、「天国をこよなく愛する」Yさんに。


お気づきになられた方は
不愉快な思いをさせてしまったかもしれません。
お詫び申し上げます。


恥をさらすようですが、やはり歌って行く間には、
いろいろな経験をするのですね。
でも、来て下さる方がどういう方でも
「ベンチ」としての任務を果たす必要があることを
今回教えられました。
「ベンチ」自身は誰が座るか選べませんもの。


私はYさんを見ると亡き父が重なります。


父は、あんなに厳格で、酒の勢いで
どれだけ殴られたか…。
でも、召される2年間は子供のようだった。
病院にお見舞いに行くと
「来たか!」満面の笑みで迎えてくれた。
「飴は持ってきた?」といつも聞いてきて
「ダメだよ」と言いながら、ひとつだけ手に握らせた。
すぐに飴を頬張ると
「もっとちょうだい」
「ないよ!」
「ちっ!しけってんの!」
そんな他愛もない会話が蘇ってくるのです。


父が目薬を指で開いている目ではなく
閉じた方の目に差して母と大笑いしたこともありました。